この甘美な花に、どう名付けるべきか?「青い花」/志村貴子/太田出版/2004年〜2013年/漫画/百合/感想

 読み終わった後、しばらく溜め息ばかりが漏れました。

 相手の「好き」と、自分の「好き」が違ったらどうしようと思い悩む少女達の姿が、あまりにも美しく尊く思えたからだ。

 身勝手に好きになって傷ついて。勘違いかもしれない想いに熱くなって後悔して。それでも好きだと頬を赤らめることが出来るだなんて、思春期ってなんて素晴らしいのだろう。実に羨ましい。こんな綺麗に人を恋しく想うことが今の僕には出来ないから....



 「青い花」は、いわゆる百合作品で、初恋さえしたことが無い少女と、年上の女性と既に身体を重ね合ったことのある少女が、久方振りに再会するところから物語が始まります。

 「その一言は、10年の月日をかるくとびこえた」

 
 再会した時そう感じた”万城目ふみ”と、そう感じさせた”奥平あきら”。 ふみは兎に角惚れっぽく、あきらは、兄が異常なほどのシスコンである以外、ごく普通の女の子。そんな2人が、いかにしてお互いの「好き」の形の差を埋めてゆくかまでの心の起伏が見事に描写されており、彼女達は勿論、周囲の人々のドラマにまで波及してゆくから、実に見所満載でありました。

 百合の人

 普通の人

 なり損ねた人

 なりそうな人

  
 それぞれに葛藤があることを、印象的な言葉と「間」を使って志村さんは巧みに描き分けてゆきます。 ただの思春期特有の憧れや夢想でお茶を濁して終わりではなく、そういった心と身体の欲望を逃げずに描くから志村さんの本は面白い。しかもほとんどの登場人物が片思いであるのが実にリアルな人間関係に思えてなりません。色恋っていうのは、やはり片思いで上等なんだと思います。どんなに分かり合えていると感じても、それはたまたまお互いの片思いが限りなく等しい重さになった瞬間の勘違いなのだとさえ思った。

 彼女達は同性だから互いの気持ちを必要以上に心配しているのだけど、相手が自分の「したい」ことを望んでいるかどうかに悩むのは、通常の異性カップルでもままあることですし、同性ならば尚の事思い悩むのでしょう。彼女達の淡い恋心を見てると、こんな純粋な想いに性別云々なんて無粋だと、つくづく思いました。愛しい気持ちを無視して、誰かのルールに縛られる必要なんて無いんですよね。勘違いの恋だって愛になれるチャンスがあるのだから。



 僕は男だが、彼女達の熱に浮かされた学園生活が羨ましい。教会があるキャンパス。丁寧に挨拶をしてくれる年少組。誰もが恋に落ちずにいられない美麗で絵になる先輩。こんな学園生活なら、女の子生まれ変わって、女の子と文化祭やら旅行やらお泊まり会やらしたくなっても仕方ないのではなかろうか?(まあ女子校に実際通っていた志村さんが言うには、そんないい場所では無かったから青い花で理想的なキャンパスライフを描いたらしいですけどね。) 男同士の友情を怪しく感じて腐る女子達が多いですが、男からしたら女子同士の方がよほどナチュラルに怪しいですよ(ユリ´▽`)ジ〜

 女性が描くBLは想像で描かれているのが多い為か、みてくれは男だけど中身は女性的な登場人物が多く見られどこか不自然。それに対し女性が描く百合は普通に本当の想いが見え隠れしてて本物に思える部分が多いように思います。


 大事な部分は身も心も同性が1番理解出来る。

 だから精神的に不安定な思春期の少女達は、想いが通じる女性に走るのかもしれませんね。




  (= ワ =*).。oO羽海野チカさんとかが、ちょっとエッチな百合漫画描いたら面白そうだなぁ....

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本編を楽しめたなら、志村貴子さんのロングインタビューが読める「マンガ・エロティクス・エフ vol.82」も読んで欲しいです。これを読むと青い花の余韻に2倍も3倍も浸れること間違いないです(ステマ)
http://www.ohtabooks.com/publish/2013/07/06155637.html

posted by lain at 22:08北海道 ☔Comment(0)漫画

世界をアップデートするのは君自身だっ( ゚Д゚)p「ガッチャマン クラウズ」/中村健治(監督)/タツノコプロ/2013年/アニメ/感想

 今年の夏、あまりにも伝統的なガッチャマンの特徴を無視した作りがファンから大いに叩かれたことで記憶に新しい実写版と同じく、本作「クラウズ」も元の設定をほとんど無視した物だったので、ポジティブな感想を持たない方も多いかと思いますが、キャラ原案"キナコ"さんと、作監"高橋裕一"さんが作り上げた色彩感覚豊かなキャラは愛らしいし、蛍光色や奇抜なフォルムが目を惹く変身姿もかなり凝っているので一見の価値があり、そして何より現代のネット社会において重要なコミュニケーションの手段であるSNSの方向性をテーマにした脚本は、大変興味深く旬な話題でありました。




 ぶっちゃけ何を考えているのか分らない”一ノ瀬 はじめ”が、都市伝説のように語られるヒーロー”ガッチャマン”に勧誘され、未確認物体”MESS”と戦っているガッチャマンの一員になるのだが、”はじめ”はそんなMESSとも友達になってしまうほどの柔軟なコミュニケーション能力を持っており、正義の為と凝り固まっていたガッチャマンに新風を巻き起こしてゆくこととなります。

 とにかく掴み所が無さ過ぎる”はじめ”の性格に序盤は辟易します。手帳が好きで、巨乳で、語尾には「っす」を付ける女子高生ってだけでも敷居が高く、自分のことを「僕」と呼ぶ”はじめ”の不可思議な言動と行動に大いに振り回されてモヤッとする場面もチラホラ。

しかし回を追うごとに彼女のキャラが確立されて来て、後半はキーマンとしてしっかり物語を引っ張ってくれた気がします。人間の弱い所につけ込む”ベルク・カッツェ”という悪質な宇宙人とのやり取りも実にユニークで、かなり高度な心理戦のようにも見えました。ふざけてばかりに見える”はじめ”ちゃんの、可愛いだけじゃない底知れぬ懐の深さが、実はかなり怖いかもしれないw

 
 クラウズはもう一人重要な主人公が居ます。”はじめ”ちゃんを含め、多くの人が利用するSNS”GALAX”を作った”爾乃美家 累”です。人前に出る時必ず女装する彼は、GALAXを使って人々が自然と助け合える世界を作ろうとしており、その想いをベルク・カッツェに利用されることになります。

 このGALAXというのが大変便利なもので、AIがGPSや公共機関に設置された監視カメラなど、ネットから手に入るあらゆる情報を元に、個人の些細な悩み解消から、大災害の救助活動まで、その場に必要な人員を登録ユーザーから適材適所選び出し、人と人の繋がりをスムーズに管理してくれるというから凄い。

これは、ソーシャルサービスが目指す理想の形であり、無駄に才能を持て余し、押し入れの片隅に眠らせているような人達が「必要」とされていることを実感出来る点でも素晴らしいシステムだと感じました。それでなくとも自己完結型の生き方が主流になりつつある時代ですから、自分が世界に必要とされているかどうかが非常に分かり難く、生きる意味を見失いがち。もしもGALAXが実現したら、年間の自殺者の量は減るのではなかろうか?

しかし、もしもそんなAIによる人類管理を進めてしまったら、いずれ個性を活かすはずだったシステムが仇になり、自己解決を一切しない、他人任せでAIの言う通りにしか行動しない面白みに欠けるディストピアに変貌する可能性が無いわけでも無い。セカンドシーズンの制作決まっているそうですが、その辺りの可能性に今後触れることがあるのか無いのかによって、クラウズの本当の価値が決まりそうな気がしますね



自主的な変革の大事さがテーマになっていた本作、予算や枠を抑えるために、知名度の高いガッチャマンの名前を使用していますが、ガッチャマンという名前を付けない方がよほど自由で魅力的なものになったかなと思いました。もっと色んな異星人との戦いも見たかったし、ガッチャマンメンバーの過去話も欲しかった。累君の可愛いところもまだまだ足りないし、是非セカンドシーズンは各キャラを掘り下げたエピソードにも期待したいところです。



それにしても"はじめ"ちゃんのゆるふわ感が可愛くエロい...




いやいや、累君も捨てがたい....(萌´▽`)♡

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 公式サイト http://www.ntv.co.jp/GATCHAMAN_Crowds/index.html




 関連過去記事

 『♪江の島いいとこ~行ってみたいよ~はいのはいのぉ~『つり球』/中村健治(監督)/A-1 Pictures/2012年/』

posted by lain at 09:49北海道 ☔Comment(0)アニメ