夏と言えば恋かぁ...『あの夏で待ってる』/長井龍雪(監督)/J.C.STAFF/2012年/アニメ/感想

 急遽夜勤の仕事が入り昨日の日中休みになった為、3年振りにプラモ作りを開始しまして、そのお供に「あの夏で待ってる」を垂れ流していました。




 地球を目指してやって来た美しい宇宙人が、着陸の際ウッカリ死なせてしまいそうになった男の子と恋仲になってゆくと言う王道ラブコメで、直接的な繋がりは描写されませんが、登場人物が「最優先事項よ」と口走ってみたり、過去に地球を訪れた宇宙人の残したメッセージが「おねがい☆ティーチャー」のヒロイン”風見みずほ”のものとしか思えないので、”おねがい”シリーズの3作目だと思いながら僕は観ていました。丁度おねがいティーチャーから数えて10年目の節目でもありましたしね。

 今作は「おねがいツインズ」のような同年代同士の複雑な恋愛模様と、1作目のシチュエーションとが組み合わさったような作品で、グラマラスでマザコン男がコロッと恋に落ちそうな赤毛のヒロインの登場に揺れる少年少女達のなかなか噛み合ない好きのベクトルが甘酸っぱくてもどかしいストーリーでした。

 ご都合まみれで強引な描写も多々あるけれど、キュン♡としてしまう雰囲気作りが上手かったです。主人公によるモノローグも良かったし、夏の陽射しが産み落とす陰影の表現が特に素晴らしかった。この辺りの下支えがあるからベタな展開やキャラの魅力が増していたのでしょうね。

 今回初めて”羽音たらく”さんの描く主人公が好きになれましたし、主人公とヒロインが改めてお互いの気持ちを確かめ合いながら、「これで5回目」とヒロインがつぶやきつつ主人公にキスをするシーンは鳥肌が立つ想いでした。こんな夏を過ごした事ナイワー!羨まし過ぎました..._/乙(、ン、)_

 ほんと可愛らしくエッチなヒロインのここぞと言う場面での積極性がたまらないのがおねがいシリーズですね♡



 それはそれとして、脚本の黒田さんなんですけど、あまりオリジナル作品の脚本とか書いてませんし、書けないのかもしれませんけど、おねがいシリーズから完全に切り離したオリジナルが観てみたいです。「無限のリヴァイアス」や「スクライド」、今回の「あの夏で待ってる」もそうですけど、何処かやり切れていない感がやはりあるように思いました。

 脚本だけの問題じゃないと思いますけど、監督は「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」で深々と僕らの心をえぐった”長井龍雪”さんですし、どうしても脚本の力不足に原因を感じてしまわなくも無い。

 この夏、巨匠である”宮崎駿”さんが自身の今まで避けて来た領域へ脚を踏み入れ「風立ちぬ」を作ったように、あと一歩踏み込めば忘れられない夏の想い出になれたかもしれないのが残念でした.... 



 黒田さんは良い意味でも悪い意味でも期待通りだったけれど、”長井龍雪”さんは『夏』の演出に磨きが掛かって来たように思います。長井作品は夏の風物詩と言っても過言では無いでしょうw

 もうすぐ「あの花」の劇場版も公開になりますし、来年はどんな作品で僕らに夏を届けてくれるのでしょうね?(ゝω・)




 公式サイト http://www.ichika-ichika.com




 関連過去記事
  「この2人は熱い♡「あの夏で待ってる/長井龍雪(監督)/黒田洋介(脚本)/羽音たらく(キャラ原案)/J.C.STAFF/2012年/アニメ/感想」」
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陽子の旅の始まりから最新短編集までを読んで『十二国記』に想うこと

 待望のシリーズがとうとう再起動すると言うことで、その前哨戦と言える書き下ろしを含めた4編からなる短編集「丕緒の鳥」を発売日から間をおかず直ぐ様購入したのですが、せっかくなら最初から読み直そうと考え読み終えるまで新作は封印しておりました。

 しかし一旦読み始めるとシリーズは全部で11冊分(「魔性の子」は除く)あるので、ちびちび読んでいるだけだと時間が掛かる事掛かる事w 結局1月以上掛かって今までのシリーズを読み切りました。


 
 突然”誰か”がやって来て主人公を異世界へと誘う

 という展開はファンタジーの常套手段ですが、十二国記の一応主役である”陽子”の場合は、異世界への入り方が非常にリアリティに溢れているというか、非常に神である小野不由美さんに命懸けの勇気が試される事になります。

 迎えに来た男とはぐれ、見知らぬ異世界の住民にはことごとく裏切られ、執拗に自分を付け狙う”妖魔”と独りきりで闘いながら目的地も分らない旅を続け心身共にボロボロになってゆく陽子。こんなに苦しくて辛い始まり方をする異世界ファンタジーは、日本にそれほど存在しない事でしょう。読んでいて本当に苦しかった。

 しかし、この試される旅のおかげで陽子は様々な事を学び強く成長してゆく事になります。彼女が通った試練の道からは、僕達が実際に困難に立った時、どう考え尊厳を保ち続けるべきかと言うヒントが溢れており、再読した今回も襟を正す想いでいっぱいになりました。

 特に、僕が独りよがりな殻に閉じこもり誰かを責めたくなった時は、このセリフを思い出します。


 『裏切られてもいいんだ。裏切った相手が卑怯になるだけで、わたしのなにが傷つくわけでもない。裏切って卑怯者になるよりずっといい』


 他人に続けて傷つけられた陽子が、のちに無二の友になる”楽俊”さえ信用出来ず疑い裏切りそうになった自分を奮い立たせる為に口にするセリフですが、これほど今必要とされる思想があるだろうか?

 核を射つぞと威嚇し続ける隣国に怯えて軍備を強化したり、多くの贖罪を果たして来たにも関わらず、いまだに大戦での罪を想い出せと怒りの声をあげる人々へ子供のように喧嘩腰で言い返したり、相手が自らの品性を貶めているだけの行為にいちいち反応して、相手以上に品性を失っている日本人にこそ陽子のこの言葉の意味を胸に刻んで欲しいです。



 他にも十二国記の世界は僕らの世界が抱える問題と向き合うような要素が目を惹きます。たとえば”因果応報”と言う言葉がそのまま摂理になっており、国を治める王が道を誤ると国は自然現象から荒れ始め、いずれ王はその身を持って購う事になります。だからと言って善政が常に行われるわけでは無いけれど、無能な王にはちゃんと報いがあると信じる事が出来る為、幾分僕達の世界より救いがある。

 新たな生命が特殊な木に生ると言うのも面白い。ただ欲望に身を任せた結果から産み出されるのではなく、真に子を授かりたいと木に祈った者にだけ子供が出来るのです。これは本当に親に望まれて産まれると言う事なのだから、非常に幸せな生命誕生の仕組みだと言えるでしょう。育児放棄や虐待が増えて来た時代に、子を授かる事の意味にも思いを馳せてしまう設定では無いでしょうか?


 
 前にも書きましたが、僕の価値観を根っこから育ててくれた父が”田中芳樹”さんなら、母は”小野不由美”さんです。

 膨大な量の架空の設定から構築されている十二国記には途方もない冒険も溢れているけれど、その多くは僕達が抱える様々な問題や苦悩と同じ苦しみを持つ人々の「心」が描かれており、彼等の行動一つ一つから読者である僕らが受け取るメッセージがとても多い。 だから間違い無く小野不由美さんは僕と言う人間を育ててくれた恩師であり母なのだ。

 名も無き官や民が世界に翻弄されつつも誇り高く生きようと足掻く「丕緒の鳥」でもそれはぶれていませんでしたし、これから紐解かれるであろう物語でも小野不由美さんの真髄で在り続ける事でしょう。



 本当に十二国記と小野不由美さんにあの頃出会えて良かった。

 山田章博さんの絵に惹かれなければ手に取る事も無かったかもしれないので、山田さんの導きにも感謝の気持ちでいっぱいです。

 他にも沢山十二国記の魅力を語りたいけれど、キリが無いので止めておきます♡ (= ワ =*)


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 新潮社公式十二国記サイト http://www.shinchosha.co.jp/12kokuki/




関連過去記事

「小野不由美さんが帰って来た。「残穢」/小野不由美/新潮社/2012年/小説/感想」
http://lainblog.seesaa.net/article/299191803.html

「起き上がる原作の重み『屍鬼』/アミノテツロ/童夢/2010年/アニメ/感想」
http://lainblog.seesaa.net/article/260130585.html

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引き蘢りに調教された婦警の末路...「リモート」/こしばてつや(漫画)/天樹征丸(原作)/2002年/講談社/漫画/感想

 お盆休みだったからと言うワケでも無いけれど、漫画熱が高まったので積み読本を崩そうと、何気なく一番近くにあった「リモート」を一気に読み切りました。

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 作画はちょっぴりふくよかな女の子を描かせたら良い仕事をする”こしばてつや”

 氏の代表作である『天然少女 萬』から久し振りにまとまったシリーズへと成長した今作は、原作に”天樹征丸”を迎えた事によって、かなり”こしばてつや”さん本来の作風が「金田一少年の事件簿」に見えて仕方無いほど天樹氏の影響下にあったような気がします。

 丁度「金田一少年の事件簿」が一旦連載を終えたタイミングでの「リモート」でしたから、同時期に連載が始まった「探偵学園Q」並に金田一でのマンネリを晴らそうとする天樹征丸氏の鬱憤がこれでもかと爆発しており、実験的な試みが非常に面白い内容でしたね。まあこの方は他名義で相当な量のお仕事をしてた人なので、リモートが特別と言うわけでも無さそうですが....


 で、簡単に説明すると、過去の出来事により感情が死んでしまって引き蘢り状態の天才警視”氷室光三郎”と、寿退社を逃してしまって引き蘢り警視の小間使いに任命されてしまった婦警”彩木くるみ”がなんとも奇妙なラブコメを繰広げるミステリーです(わかりにくっ!)

 天才警視は感情が死んでいるので、とにかく主人公の彩木に厳しく冷たい態度で接してしまうのですが、彩木は物事を良い方に考える事が出来るポジティブギャルなうえ、天才警視の心の闇を放っておけずにずるずる猟奇的な事件の解決に協力してゆきます。


 ここまでは何処にでもあるような内容なのですけど、面白いのは名探偵コナンが小五郎のオッサンを麻酔で眠らせて推理を披露するのと同じく、自宅から出る事が出来ない氷室に代わり、電話で氷室警視から言われた通りの推理を彩木が犯人達の前で見せるところ。ここが『リモート』たるゆえんなのです。

 あくまでも現場へは行かず謎を解き、自分を操り人形のように使って事件を解決させる氷室の仕打ちに始めのうちは泣いてばかりの彩木ですが、氷室警視の絶妙な飴と鞭によってストックホルム症候群も真っ青になるほど彼に心惹かれてゆく事になります。

 ある種”調教”とも言えるようなこの奇妙な関係がなんとも印象的で、当時人気絶頂のアイドル達を使ってドラマ化されたのも納得の作品でした。

 まあドラマの方はあまり観てませんでしたけどね....



 飽き来てしまうほど続かなかったのも逆に好印象だった「リモート」

 天樹さんや”こしば”さんにとっては、どんな位置づけの作品になったのでしょうね?(´-`)





 ドラマ版のHP http://www.ntv.co.jp/remote/
posted by lain at 23:03北海道 ☔Comment(0)漫画