優しい嘘は、自分が思うより優しくは無い『ブラック・ブレッド(原題”Pa negre”)』/スペイン・フランス/2010年/映画/感想

 予告や映画紹介でミステリー映画だと煽っているのを多く見かけたが、今作は間違いなく不安定な国内事情に翻弄された少年の成長物語でありました。



 舞台は第二次大戦の前哨戦になった内戦直後のスペイン。カタルーニャ地方の小さな村に住む少年が、崖から落ちた馬車に気付き、幼い友人が瀕死の姿で倒れているところを目撃してしまってから、友人が死に際に残した「ピトルリウア」と言う言葉の意味を深く追求する暇もなく周囲は慌ただしさを増し、騒動が収まるまで祖母の元に預けられる事になります。

 その後も本当の事を話さない大人達の駆け引きに振り回される少年は、じわじわと傷ついてゆく。心の痛みを和らげてくれるのは、同じく大人に翻弄された少女と、世間から弾かれてしまった病い持ちの青年だけ。全てが落ち着いた頃には、すっかり薄汚れた大人の世界に身を焼かれ、深く心を閉ざした少年の姿がありました。


 ファシズムを提唱する一派が政権を取っていた当時のスペイン。その頃の悪しき流れと大人の一方的な「優しい嘘」とを子供の無垢な視点で捉えているので、ミステリアスに写るところもありますが、単に少年がどんな自分になりたいのか。そしてどんなスペインにしてゆきたいかを描いたのが本作な気がします。

 政治闘争に身を尽くす父親
   愛に破れて権威を振りかざす男
     心の拠り所が欲しかった少女
       日和見主義のロリコン教師 
         恥を知らない怠惰な地主


 様々な人間を目撃して少年は未来を選択します。

 父の命懸けの想いを語った母親の寂しそうな背中を見つめながら、窓に息を吹きかけて別れを告げるシーンに、少年の非情な選択の裏に隠された決意を感じてすごく切なかったです。

 主役の少年を含め、なかなかしっかりした子役が配置されていたのは大きかったですね。他のメインキャストもかなり良くて、特に父親役の”Roger Casamajor”が印象的でした。子供には言えない自分の罪深い行いを抱えながらも、必死に少年に人生の喜びを与えようとする姿がたまらない。


 「元気に過ごせ。子供の唯一の義務だ」

 「戦争が怖いのは飢えや死なのではない。人が理想を忘れて空っぽになることだ」


 こんなセリフ一つ取っても良いお父さんでしたよ....

 

 他にもイケメンが全裸だったり去勢されたりするシーンもあって、何故か腐女子にも美味しい映画になってましたw

 少々方向性が突き抜けていない分、物足りないと感じる人もいるでしょうけど、白いパンを食べることさえ許されない人々の嘆きとささやかな幸せが上手く再現された作品だと僕は思いました(´-`)


 

 公式HP http://www.alcine-terran.com/blackbread/index.html
 
posted by lain at 14:34北海道 ☔Comment(0)映画