2016年09月25日

時間の死んだ街で”あい”を叫ぶ女優『安藤裕子 2016 ACOUSTIC LIVE 旭川 島田音楽堂 9/24』感想

 僕の住む北海道の旭川と云う場所は、正直真ん中辺りに在ること以外特徴の無い中途半端で地味な街だ。人口が札幌に次いで多いから、北海道第二の都市だなんて言われることもあるけれど、3位の函館との差は7万人ほどで札幌に比べれば1/5しか無いし、盆地のおかげで空気の流れが悪く、蒸し暑くて空がすっきりしないうえ、寒暖の差が激しく夏の最高気温と冬場の最低気温とでは50℃も差があるから生活し易い場所とは到底言えない。

 旭川を舞台にした作品「櫻子さんの足下には死体が埋まっている」の主人公になんて僕は時間の死んだ街でうまれた。 良くも悪くもマイペースで強情で、変化を嫌うこの街では、澱んだ時の流れすら平穏だとか、安寧と呼ばれる。変えられない、変われないのでは無く、そもそも変えたいと思わないのだ。』と、言われる始末。これで旭山動物園が無かったらどうなっていたことだろう.....



 そんな残念な街だから、まさか安藤裕子が来てくれるとは露程も思っていなかった。それでなくとも久しぶりの北海道上陸であったし、”お金”が目的ならもっと効率の良い場所が在るわけで、ライブスケジュールの発表があった時”旭川”の名前を見つけた時は本当に嬉しかった......

 しかも島田音楽堂というチョイスがまた彼女らしい。前回訪れたのはbonobosのライブの時で、お世辞にも客の入りは良く無かったが、逆に少人数だからこその贅沢さがあって素晴らしかったので、今回も普通に期待を膨らませ足を運んだわけだけど、本当に島田音楽堂という場所の雰囲気は格別だった(怪しいミサでもやっているみたいな場所だと裕子ねぇやんも楽しんでいた)。防音処理のために音を吸収してしまうライブハウスとは違い、音の反響がすこぶる気持ち良い。聴いているこちらがこれほど気持ち良いのだから、歌っている本人はもっと気持ち良いに違い無い。実際、彼女も伸び伸びと歌っていたように思う。感情が乗った伸びやかな声を聴いていたら、身体の芯から溢れるように涙が止まらなかった。

 初っ端から”はっぴぃえんど”のカバー曲や「森のくまさん」で客を怖がらせたかと思えば、魔女っ子みたいな光るステッキを持ち出して観客の気持ちを解し、お客の中からラップ部分を担当してくれる有志を募って「霜降り紅白歌合戦」を盛り上げて見せれば、曲作りが難しい状態にあったことを告白したうえで、やっと作れるようになった新曲を披露してくれるという、フルアルバムに絡めたツアーでは絶対味わえない構成で本当の本当にお腹いっぱいに安藤裕子を詰め込める2時間半だった。




 1曲歌い上げるまでに、これほど感情の揺れ動きを表現出来る歌手は滅多に居ないと思う。ころころと表情を変え、最高潮へと辿り着いて行く彼女の存在感は半端ではない。歌手と言う括りで定義するには勿体無いほど、髪の先から指先まで身体全体で歌を演じているように感じるのだ。やはり歌手である前に役者なのだと痛感する。歌を休業して舞台を演るのも良いのでは無いだろうか?

 僕はいつも、ライブはアーティストとの真剣勝負の場だと思っている。特にamazarashiや安藤裕子のように抜き身で立ち向かって来る人とは命懸けで、それこそ腹が減る。生きている実感とは、ただ優しいだけでも温かいだけでも得られない。自らを切り刻むくらいの代償があってこそ、人は人であることを思い出せるのではなかろうか?



 この先のことなんて分からない

 悔いなんて後にならなきゃ生まれない

 笑いたければ笑えばいい

 泣ける時には泣けばいい

 ただただ今ある感情に嘘を吐かない人生にしよう




 そんな気持ちでいっぱいになる夜だった。また何処かで彼女に逢いたい.....





セットリスト

01 抱きしめたい(はっぴいえんどのカバー)

02 森のくまさん

03 お祭りフェンスと唱おう

04 のうぜんかつら(リプライズ)

05 ほととぎす(レキシ Feat. 聖徳ふとこのソロアレンジ)

06 霜降り紅白歌合戦

07 雨とパンツ(新曲)

08 少女小話(新曲)

09 隣同士(新曲)

10 溢れているよ

11 忘れものの森

12 たとえば君に嘘をついた

13 グッド・バイ

14 Last Eye

15 Touch me when the world ends


アンコール

16 アメリカンリバー

17 問うてる


タグ:安藤裕子
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2016年09月22日

だからは僕は”君の名は”を観に行かない

最近どうも恋愛物を観るのが辛い。昨夜などは観るのを再開した「orange」で年甲斐も無くジタバタしていた。

以前は漫画やアニメなら平気だったのに、今ではすっかり架空の存在にまで嫉妬する始末で、少女漫画からハーレムアニメに至るまで、自分より若い子が強い思い込みで特定の相手を好きになりいちゃついていると落ち着かない。38歳の童貞なら、そりゃ普通に辛かろう....と言われそうだが、理由はそれだけじゃなく所謂”純愛”というやつをしたことがないのが一番辛いのだ。


あの子も、この子も良いところがあるのに、何故”ひとり”を選べるのだろう?と、幼い頃から気の多い性格だった僕には、たったひとりを愛する気持ちが分からない。だからと言って手当たり次第に付き合うような根性も無いし、そもそも性的に興奮している自分と性器を女性に晒すなんてホラー映画より怖い(別に股間にクリーチャーを飼っているわけでも無いけれど)

これまではその『分からない』気持ちが恋愛への憧れに繋がって楽しめていたのだろうけれど、それが時と共に『分からなくていい』に変わって来たように思う。だから本当は凄く観たくてたまらない新海誠の「君の名は」も純粋に受け容れられるかどうか不安であるし、そもそも一般人受けも狙った本作だから、劇場にカップルが多そうで腰がひけて仕方ない。ひとりでカップルだらけの中へ突撃した猛者に幸あらんことを...



シン・ゴジラもズートピアも抜いた作品なのだから、半年もしないでレンタルやネット配信は始まるだろう。その時が来たら、ひとりひっそりと5畳一間の狭い空間でしょっぱい涙をすすりながら、自分の欠落した何かを噛みしめようと思う.......
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posted by lain at 07:15 | 北海道 ☔ | 日記 全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
2016年09月20日

置き去られた本気の本気「きらめきのがおか 1巻」ゴトウユキコ/感想

いまや何処までを指す言葉なのか、よく分からないほど細分化された人達.......それがアイドル。

歌を歌う人、コスプレする人、服を脱ぐ人などなど、人の気を曳く為にならなんでもやる多種多様のアイドルが存在するが、そのほとんどは"idol"(偶像・人気者)では無く"idle"(仕事のない・遊んでいる・怠惰な)だから目も当てられない。

そもそも何故こんなに大量生産されてしまったのだろうか?それこそ先人のアイドル達のせいなのだろうか?彼等彼女等がステージで素晴らしい笑顔を振り撒いた結果、才能も努力も補助も無しに自分もアイドルに成ると勘違いする人達が増えたということなのだろうか?


こんな話をしているのも、「きらめきのがおか」の主人公が父親の遺言を守り、現役大学生アイドルになろうと東京に上京して来た田舎者で、負けん気だけ強く、努力を怠り、なんでも他人任せのクセに、初めて受けたオーディションでコテンパにされ一人前に落ち込んでいたのが本当に腹立たしかったからだ。

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アクは強いが優しい同居人達
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お前何しに来たんだ....

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じゃあ努力しろよ....

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勿論こんな風に僕が感じるのも、作者である”ゴトウユキコ”さんの狙い通りなのだろう。夢破れた青年に諦めてはいけないと口にしていた主人公が、自らも挫折を味わいどう変わって行くかを描く為の下拵えだ。この先の彼女が何者になって行くのか実に気になる。

とはいえ何故アイドルに成りたくて、どんなアイドルに成りたいのかがハッキリしない人にアイドルを名乗って欲しく無いのは確かだ。ちやほやされるだけがアイドルのお仕事なら、赤子でもアイドルが務まる。



常々思っていることだが、誰もが実際にアイドルに成れたとして、じゃあ誰が応援するの?ということ。プリパラのように「みんなともだち みんなアイドル!」とは行かないし、そうで無ければアイドルと言う言葉の価値は更に下落してしまう。

動画投稿サイトで嫌らしい男達の視線を集めるだけがアイドルでは無い事を、自称アイドル達には証明して欲しいものである.....


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posted by lain at 07:02 | 北海道 ☔ | 漫画 全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする