2017年07月22日

我が青春のOVA1987 #7 「マップス(1987年版)」長谷川裕一(原作)/スタジオぎゃろっぷ/懐アニ/感想

昨日7月21日は「ロボットカーニバル」30周年の日だったのだけど、実は「マップス」というOVAもひっそりと30周年を迎えていた。

そもそも「マップス」なる作品がなんぞや?ということだけど、SFを中心とした作品で今でも活躍している長谷川裕一さん(星雲賞という有名なSFの賞を貰うくらいの漫画家さん)の出世作で、主人公の男の子とそのガールフレンドが、突如現れた宇宙海賊を名乗る美女に捕まり、自分が宇宙規模の放浪民族”さまよえる星人”の末裔であることを知らされ、彼らの民族が隠したとされる秘宝”風まく光”を探しているという女海賊と共に、銀河で冒険を繰り広げることとなる物語だ。

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星をも砕く馬鹿でかい頭だけの生命体銀河伝承族はマジでやばい....

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基本的には骨太なSF大作なのだけど、ちょいちょいセクシーなのも嬉しい



本作の話をするなら、避けて通れないのがマップスを連載していた雑誌「月刊コミックNORA」だろう。あの学研が発行する漫画雑誌だったのだけど、周囲で読んでいるような人はまずいなかった。僕のように単行本は気になって手に取る人はいたものの、兎に角地味なイメージでノーラコミックを略した"NC"マークも微妙だった。しかしSF好きの評判は悪く無かったのではないかと思う。超人ロックの聖悠紀さんや、安彦良和さん、あさりよしとおさん、こやま基夫さん等々、個性派揃いの連載陣を見れば、今更ながらでも読んでみたくなるのではなかろうか?

まあ僕自身まともにコミックNORAを読んでいないのでなんとも言い難いけれど、派手さは無いけど気になってしまう雑誌の打ち出す作品は意外性に溢れていて好きだ。売れないけど面白い漫画がこの世界には多過ぎると思う。電子書籍で配信した利益が、もっと作家の元に転がり込むようになれば、売れないけど面白い漫画を描く人達が、好きに作った作品で食べていけるのでしょうね......



で、脱線したところで1987年版のマップスはどうだったか?ということだけど、正直あまり芳しくない。原作の美味しいとこどりのストーリー構成はそれなりに悪くないのに、キャラの作画があまりにもお粗末で辛い。マップス1巻の序盤だけをチェックした人が作ったようなキャラデザが生理的に受け付けないだけでなく、キャラ崩れしないシーンがほとんど無い。今の綺麗過ぎるアニメを見慣れたせいもあるかもしれないけれど、同じ時期のアニメの質と比べてもお世辞にも褒めるのが難しい。

そんなアニメの出来に左右されているのかどうか分からないけれど、声優陣の演技も何処となく微妙なのだ。当時21歳の皆口裕子さんが下手なのは兎も角、主役を演った田中真弓さんの気の乗らなさや、神谷明氏のヤケクソ感は明らかに現場のムードのせいではないだろうか?それとも完全に気のせいかな?....

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こんな人は知らない....
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こんな人達は知らない....

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他のキャラはコミカルなのに、リプミラの茶目っ気が全然出せていないのが致命的だった....





脚本に寺田憲史さんを起用したり、音楽に田中公平さん使って主題歌は関口和之さんが参加しているし、ぶっちゃけ豪華なスタッフや声優陣に恵まれているように一見見えるけれど、案外それだけじゃ現場は回らないものなのかもしれない。ただ、この作品は天使の姿をした宇宙船であるリプミラ号への愛だけは素晴らしかった...かな?


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これからマップスを観ようという人は、正規のルートで見れない1987年版は忘れて、本作から7年後に東京ムービーが作った1994年版を是非見て下さい。映像演出もパワフルだし、辻真先さんの脚本も光ってます。










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posted by lain at 07:23 | 北海道 ☔ | アニメ 懐アニ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
2017年07月21日

我が青春のOVA1987 #6 「ロボットカーニバル」1987年/バンダイビジュアル/懐アニ/感想

CGなんてものがまるで使われていない時代、兎にも角にもアニメーターはペンを片手にひたすら絵を描いていた。

来る日も来る日も描くのである。辛いことだって多いだろう。

それでも彼らは描き続けた。

何故か?....



きっとその答えがこの作品にはあるんじゃないかと僕は思った。



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バンダイチャンネル作品紹介ページ ロボット・カーニバル




まずメンツを見て欲しい。大友克洋森本晃司大森英敏梅津泰臣北爪宏幸大橋学北久保弘之なかむらたかし、という監督陣の名前を見て、誰1人知らないと口にするアニメファンがいるとは思えない。更に言うとスタッフには貞本義行や前田真宏、久石譲、ちょうどお騒がわせ中の浪川大輔も子役で出ていたりもする。完全にオリジナルのロボットにまつわる短編だけで構成したOVAを世に出すだなんて、今ではまるで考えられないことだから、それを決断した当時のバンダイビジュアルも大したものである。

どの作品も70〜80年代のSF色が色濃く出ていて、中には明るい物、優しい物もあるけれど、少々苦味のある作品が多いのも個人的にはご馳走で、天災のように町を蹂躙していく馬鹿でかいプラントのようなロボットのお祭り騒ぎを描いたかと思えば、フランケンシュタインを題材にした作品で技術を追い求める喜びと危うさを演り、同じように生命を生み出しながらも己の弱さに負けた哀れな男の最後をしっとりと見せたりと、1人の監督だけでは絶対叶わない彩りが面白いパッケージになっている。



ビスやケーブル一つ一つの描写に拘る人、一枚絵の存在感をアニメとして活かす人、それぞれがいかに自分の持ち味を活かすかを考え抜き、やりたいことをやれるだけやったというのがちゃんと伝わるアニメになっているのが見ていて一番嬉しくなる。スポンサーだの原作者だのの顔色を伺っていたんじゃ、絶対この光景は生まれないだろう。アーティスティックな自然表現が素晴らしい大橋学さんの「CLOUD」だって人目に触れることがなかったはず。ロボットカーニバルは限りなく偶然性が強い必然が生んだ奇跡そのものだ。





ロボットカーニバルが通り過ぎたあとには何も残らない....みたいな表現で大友克洋さんは自分達の作品を自負してみせたが、"こなす"だけの人間には到底創れない本作を見て、何も感じないアニメーターがいるはずなく、彼らが踏み鳴らした大地には、しっかりと新しい芽が芽吹いている。


あの時代は良かった.....なんて言ってアニメを見限るにはまだ早い。いくら作業環境が悪かろうと、アニメを作りたい人がいて、それを観たい人がいる限りアニメの火が消えることはきっと無いだろう。




今この瞬間にもペンを走らせる人達がいる。


あの日見た風景を求めて。


そう考えると、胸が熱くならないだろうか?








ロボットカーニバル発売30周年記念イベントゲスト出演決定!


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2017年07月19日

夫婦という甘く切ない風景「青白く輝く月を見たか? Did the Moon Shed a Pale Light?」森博嗣/講談社/感想

やめるやめる詐欺ってわけでも無いけれど、嬉しいことに森博嗣さんはまだ本を書いてくれている。しかも物書きとしてのモチベーションを持ち直したかのように質も良い。新しいブログも始めたようだし、このまま生涯現役であってくれたら最高なのだけど、そればっかりは先生にも先生の人生があるから仕方なの無い話だ。




もう何度もここで書いているかもしれないけれど、森作品の中で今1番好きなシリーズは間違いなくWシリーズ。初の本格的なSFシリーズで百年シリーズとの繋がりもあるから実に楽しい。主人公は人間とウォーカロン(人工細胞によって作られた生命体)を見分ける研究をしている”ハギリ”という博士で、なぜか毎度のように命を狙われ騒動に巻き込まれてしまう。


人類がなかなか死ななくなり、子が生まれない未来を舞台に、人に取って代わるかもしれない存在(ウォーカロン、AI等)を交えた森先生お得意の命の定義を揺さぶる展開もさることながら、毎度命を狙われるハギリ博士と、そのボディガードであるウグイ女史との距離感の変化も見所で、最新刊である本作では夫婦同然の掛け合いに発展していて微笑ましかった。AIと人間の女性とを天秤にかけているハギリ博士を見ていると、Wシリーズは結構ラノベ気質なのかもしれないとか思ってしまった。実に羨ましい....


僕は女性に縁がない。というか、そもそもが縁を結ぶことが恐ろしくて仕方ない。でも、互いに想いあっているのに素直になれない者達の不器用なやりとりを見るのは大好きだ。ささきすばるさんとの夫婦仲も、ハギリとウグイのような距離感なんだろうか?気になる気になる.....






今朝テレビでニュースを見ていたら、長らくドラえもんを務めた大山のぶ代さんが認知症になってからも、ずっと寄り添っていて夫の砂川啓介さんの訃報が飛び込んで来た。大山のぶ代さんとの仲睦まじい様子や、妻を置いて先には逝けないと語る砂川さんの生前の姿に泣きそうになった。


「こんな夫婦にならなってみたい」


素直にそう思った....




どんな少子化対策よりも、こんな素敵な夫婦達を世に知らしめる方が効果的な気がしてならない。


まあ、あまりにも出来の良い見本を目にしてしまうと、「こうじゃなきゃいけない!」という気持ちが邪魔になって、逆効果かもしれないけれど........





青白く輝く月を見たか? Did the Moon Shed a Pale Light? Wシリーズ (講談社タイガ) -
青白く輝く月を見たか? Did the Moon Shed a Pale Light? Wシリーズ (講談社タイガ) -







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辛い時こそ生きている僕「私たちは生きているのか?」森博嗣/講談社/感想

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